「女の子は本当にピンクが好きなのか」を読んで

この記事はブックレビューに私個人の考え方を追加したものです。
堀越英美 「女の子は本当にピンクが好きなのか」 2016年

「女の子はピンクが好き」と括られることにはどうにも違和感はある。私自身の小さいころにはピンクに対するこだわりはそんなになかったように思う。まだ時代が「キティの赤」だったことや、4つ年下の妹がいてそちらにピンクを譲っていたような気はするが、「ピンクじゃなきゃいや」とか著者の娘さんのように全身ピンクで出かけた記憶はない。それよりも、「赤やピンクはダサい」と思っていたことは覚えている。小学校に入ると、意識的に青や水色を選んでいたと思う。

この本では、色としてのピンクを扱いながら、ピンクに対するイメージや捉え方の歴史をはじめ、ピンクに象徴される赤ん坊から始まるジェンダーの再生産、「ピンクカラーの罠」として日本女性の社会進出が遅れる理由も述べています。

男女で与えられるおもちゃが違う

幼い女の子が遊びながらエンジニアリングを学べるおもちゃを作ったデビー・スターリングさんの話がおもしろい。TEDもあります。自身の経験から、組み立て玩具で遊んで育った子供の方が空間把握能力テストで良い成績をとることを知る。

「なんて残念なんだろうと思いました。私と妹がちいさいとき、両親はレゴやエレクターセットやリンカーンログを買ってくれませんでした。それは男の子のおもちゃだと思っていたのです。100年以上もの間、そうしたおもちゃは男の子向けに売られてきました。そして男の子たちが数学や科学に興味を持つのです。一方で、女の子は人形やお化粧セットを買い与えられます。これは不公平です。」

この指摘に納得がいくことは多い。私自身も空間把握能力には全く自信がありません。小さいころのおもちゃで思い出すのはひみつのアッコちゃんのコンパクトと、シルバニアファミリーと、リカちゃん人形・・・(ちなみにリカちゃんは数学が苦手らしい。)「女の子らしい」なんてあまり言われたことのなかった私ですらこうなのです。学校の勉強は得意な方でしたが、数学はずっと苦手でした。理解するのに国語や英語の倍以上の時間がかかる。それでもなんとかやっていましたが最後まで数学の面白さに気づくことはなかったです。小さいころの教育や経験がすべて、ということではないけれど、「決めつけない」「可能性を見つける」という視点は重要だと思います。

ピンクカラーの罠

徐瀬の仕事とみなされがちな職種全般を「ピンクカラー」と呼ぶ。小売店の店員や、キャビンアテンダント、看護師、スタイリスト、秘書、一般事務、歯科衛生士、通訳、司書など・・・。

著者は、これらの職業を目指すことが間違っているわけではないが、たくさんの人がやれてたくさんの人がやりたがる職業は賃金が低い。特に一般事務などのアシスタント職が顕著で、「どうせなら若い女の子のほうがいい」という考え方がいまだにある。

女の子がピンクカラーを目指す理由を3つ挙げている。

1.そもそもピンクカラー以外の選択肢に考えが至らない
2.男性の多い職業に進むにはある程度の覚悟が必要となる。男社会の中でやっていける「自信」と「勇気」がない
3.「無垢な美少女」「尽くす母親」といった自我や欲望を持たぬ女性を理想像として刷り込まれて育った女性は自分の欲望を見つめることに慣れていない。「自分は客観的に見て何に向いていて、本当は何をしたいのか。そのために何をすべきなのか」を突き詰めて考えないまま大人になる。そして周囲の期待する女性像に我が身を添わせてしまう。

やはり3が一番興味深い。私は小さいころから自我が強かったので、3のようにならないようにという気持ちを持っていた。自分がしたいこと、考えていることを優先しようと思っていたつもりだが、付き合っている男性から「手料理が食べたい」と言われれば違和感を持ちつつも応えたいという気持ちになったし、仕事がつまらなくなった25、26歳のころ、結婚して仕事を辞める選択肢を考えたりもした。(仕事を辞めるのはいいが、「結婚して」という前提を考えた自分にびっくりだった)

著者が言っているように、「アナと雪の女王」のヒットやピンクを好む男性の増加など、従来の価値観が変わってきている気配は感じる。ツイッターを見ていると、「これは差別だ」という投稿に出会うことも少なくない。3/8の国際女性デーを目前にして議論は活発になってきている。

でも、やはり要は「自分らしく生きる」とはどういうことかを考え抜き、パートナーや周りの人とアサーティブに協力していくことに尽きる。そして、考えているときに「これはジェンダーバイアスかもしれない」と気づく感覚を持つこと、これが重要だと思う。

著者はあとがきでこう締めくくっています。
「女子が容姿ばかりに駆り立てられずに済む世の中にならないかなあと願わずにはおれない。ピンク色はかわいい色だけれど、女性がみな同じピンク色の方に押し込まれる世界はつまらない」その通りだと思います。

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