「個人的なことは政治的なこと」の意味~フェミニズムとは何か(2/2)

頭にようやく血が巡ってきたような、「しっかりしろよ」と言われているような読後感の本
上野千鶴子 田房永子 「上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください」 2020年
ブックレビューの2/2です
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働く女と専業主婦の分断は誰のせい?

この本では、女性の間の対立についても言及しています。「働くお母さん」と「専業主婦」、「既婚者」と「シングル」、「子持ち」と「子なし」・・・田房さんは、2012年の第1子出産の際には 「旦那さんの給料だけではやっていけないんでしょ」という意味で、 「保育園に預けなければならないなんてかわいそう」という人がいたそうです。それが2017年になると、働くお母さんが増えて専業主婦の方が肩身が狭そうに見えたと。この5年間での変化を感じた、という話です。

私の妹は、一昨年第1子を出産して、保育ママに預けていますが、私の母は「子供がいちばんかわいいときに預けるなんてかわいそう」と言いました。多分悪意はないし、きっと自分の専業主婦としての子育て(思いっきりワンオペ育児)が大変なこともたくさんあったはずなのに美化されているのだと思います。それでも、「かわいそう」と言われる側はまだまだ傷つく。働く女性たち、今子育てをしている女性たちの意識が少しずつ変わっても、世の中の多くの割合を占める60代以降の考えに縛られることもたびたびあります。

また、2019年10月からの保育園無償化によって、新たな分断も生じている。「保育園に入園できるママ」と「保育園に入園できないママ」。「妻が働きたくても保育園に入園できないから専業主婦になった家庭」と「共働きで保育園もタダになる家庭」では所得格差も広がる。同じ年代を持つ母親同士なので、本来なら仲間で連携すべきなのに、分断を国が生じさせている。

先日「待機児童」と「保留児童」の意味を知って愕然としましたが、保育園が全入ではないのに、無償化をするって何か順番が違う気がします。小学校が足りなくて小学校に入れない、なんて話はないのだから、そこから手を付けるべきだと思います。田房さんは、自分はA面側(無償になる側)だから声を上げずらいという。最近の私たちが声を上げられないのは、ここに問題が隠れていると思います。上野さんが言うように、デモが向いている人なんていないし、誰かが石を投げなきゃ波は立たない。もしかしたら、ここに私のような「未婚子なし女性」ができることがあるのかもしれません。ど真ん中の当事者ではないからできることがある、と思うのです。

「一人一殺」家庭から社会を変える

一人一殺、ちょっと過激な言葉ですが、この本の中では「社会を変える革命には失敗したけど、自分の全生涯をかけて男一人ぐらいは変えようよ」という意味だそうです。男性には既得権益(育児しなくても育児放棄と言われない、女性より賃金が高いなど)があるので、妻はそれに対して一個一個「不平等だ」と訴えて潰していかなければいけないと。主婦同士のコミュニケーションの中では夫の悪口を言い合うことが多く、最近ではツイッターでもよく取り上げられています。田房さんも、上野さんも、「こんなとこで言わずに夫に直接言えよ!」とバッサリ。

結婚は、自分の人生に相手を巻き込む、相手の人生に自分の人生が巻き込まれる、という人生のものすごく大きな選択で、真剣勝負。そのはずなのに、習慣だから、習俗だからってなんとなく結婚する人が多い。だから、修羅場を回避したり、子供が生まれたからって生活スタイルを変えられなかったりしてしまう。夫婦間でも手を抜かない交渉を続けないと、その次のステップに行けない・・・家庭を変えられない人が社会を変えられないとも思います。

フェミニズムとは

この本の最後に、「フェミニズムとは、女が女であることを愛し、受け入れる思想」と上野さんは言っています。フェミニズムは多様なもので、一人一派、それ以上あるかもしれないとも。

私にとってのフェミニズムは、「女性はこんなことを考えているんだ、と世の中の男性に知ってもらい、男性も女性も自分らしく生きられるように行動していくこと」だと思います。この本の背表紙にあった「私の生きづらさは私だけの問題じゃなかった!」と女性も男性も気づく。そして、社会に対して思っていることや違和感をどんどん訴えていい。ウーマンリブの活動やファーストペンギンとなった女性がいたから今があるんだから、私ももう沈黙はしないで建設的に行動していきたいです。

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