「個人的なことは政治的なこと」の意味~フェミニズムとは何か(1/2)

頭にようやく血が巡ってきたような、「しっかりしろよ」と言われているような読後感の本
上野千鶴子 田房永子 「上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください」 2020年

上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください

上野千鶴子さんと「母がしんどい」などのコミックエッセイで知られる田房永子さんが、フェミニズムについてその歴史から現在の状況までを対談形式で深めていく本です。注釈も丁寧だし、田房さんの漫画も掲載されていて読みやすい本だと思います。ただ、その中で語られている内容は真実を突きすぎていて、自分の内面と対峙するような気分になって時に小気味よく時に重たい、そんな本です。

田房さんは1978年生まれということなので、私とほぼ同年代です。田房さんは母との関係に悩んでいます。母の時代は、結婚相手の経済力に依存する以外生きる道がなかった。そんな時代の母たちは次世代へ思いを託すしかなかった。けれど、その託された内容は「手に職つけろ(働け)」と「結婚して子供を産め」の2つ。一方男性の育てられ方は変わらず、「仕事に集中できるようにいい奥さんもらえよ」「男は家族を養うもの」「仕事がいちばん」と言われてきた。そんな二人が結婚出産すると一気にそのギャップが表面化する。男性は「働くのはいいけど家事はしっかりやってね」と言い、女性は仕事や家事や雑務育児に奔走する・・・

個人的なことは政治的なこと

田房さんはその状況を改善するために夫ととことん向き合ってきたとのこと。上野千鶴子さんはウーマンリブの思想「個人的なことは政治的なこと」という言葉でそれを説明します。女性が個人的なことを話し出したら、それは多くの人にとって「あるある」だった。私だけの問題じゃなくてこの「あるある」には原因がある。それを改善しようとしたのがウーマンリブだったようです。

上野さんは「フェミニストは【わたし】から出発する」と言います。個人的なことは政治的なことだから、と。この意識が社会を変えていくはじめの一歩なんだと思います。

A面(市場)とB面(家族)

田房さんはこの「個人的なこと」と「政治的なこと」をA面、B面と表現します。政治経済や雇用がA面で、生命、育児、介護障害などがB面。A面は融通が利くけどB面はかけがえがなく代えがきかないもの。A面は男性たちが暮らしていて、女性も最初はA面にいるんだけど出産や育児にぶち当たったときB面に行かなければならない。男性は基本的にA面にいられるけど女性はA面とB面を行き来しなければならない。B面から女性がA面に訴えないと、A面からB面に働きかけるということはほとんどあり得ない。A面にいられるのは得だから、と。ジェンダーやフェミニズムはB面の話だった。

この表現を上野さんも絶賛していますが、私も同感です。B面については出産育児にかかわらず「言ってはいけない」暗黙の了解みたいなものがある。「個人的なことは政治的なこと」といったウーマンリブからはや50年(!)その時代の女性たちが掴み取ってきたものを私たちは理解しているのか、次の世代に向けて何ができるのか。最近のフラワーデモやMeToo運動でジェンダーやフェミニズムが注目されてきてはいるけれど、この15年くらいの間、女性はあきらめたり静かに企業やA面から去っていったような気がしてなりません。

後編へつづく

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